DSMの導入によってはっきりしたものに、産後うつ病も挙げられます。産後うつ病については、ホルモンバランスの変化が精神変調の原因であると考えられ、以前は「産祷期精神障害」という、独自の病名が用いられることが多かったのです。
マタニティブルーズは自然に、短期間に治りますが、産後のうつ病は自分だけで治すのは難しくなります。放置すれば慢性化・重症化の心配があり、育児虐待など悲劇につながる可能性も出てきます。
研究が進められた結果、意外なことに、産後よりもむしろ妊娠中の方がうつ状態が多いこと、うつ状態の重症度や性質も、産前、産後で差がないこと、過去のうつ病の病歴が産後のうつ状態の危険因子であることなど、産後うつ病は、症状や経過などの点では、特に他のうつ病と違いがないことがわかってきました。
授乳中の服薬の問題など、産後特有の問題はいろいろあるにせよ、産後うつ病も、基本的には普通にうつ病の治療をすればよいと考えられるようになったのです。
このように、「うつ病の患者さんで脳梗塞が見つかったら、脳梗塞がうつ病の原因」「ストレスの後でうつ病になったら、ストレスがうつ病の原因」などと、決めつけずにきちんと研究してみることによって真実が見えてきたようです。
PR